交通事故

後遺障害等級認定に紛争処理センターは使えない!?

交通事故紛争処理センターは、交通事故の示談交渉を仲裁するADR(裁判外紛争処理機関)です。

弁護士との法律相談・和解のあっせん・審査会の審査を無料で利用できます。弁護士に依頼せずとも、損害賠償金の相場の中でも最も高額な「弁護士基準」に基づいた示談金を受け取れる可能性があります。

しかし、後遺症が残ってしまったときの損害賠償請求で大きな問題となる「後遺障害等級認定手続」に、交通事故紛争処理センターは関わることができません。

後遺障害等級認定は、後遺障害の損害賠償金が手に入れられるか、いくらになるかを左右する重要な認定手続。専門的なサポートを受けられずに不適切な認定がされてしまうと、交通事故紛争処理センターを利用しても満足のいく賠償金を受け取ることは難しいでしょう。

ここでは、後遺症が残ってしまったとわかったあと、まだ後遺障害等級認定手続の申請をしていないものの、交通事故紛争処理センターの利用を検討していらっしゃる被害者様に向けて、あらかじめ弁護士に相談・依頼をしてから手続の申請をすべき理由を説明します。

1.後遺障害等級認定手続と紛争処理センターの関係

交通事故紛争処理センターは後遺障害等級認定手続には一切手出しをすることができません。

そのため、後遺障害等級認定手続について専門家のサポートを受けるには、交通事故紛争処理センターではなく、普通の法律事務所の弁護士に相談することが必要です。

(1) 紛争処理センターは後遺障害認定のサポートができない

「後遺障害慰謝料」や、後遺症により将来手に入らなくなるであろうお金「逸失利益」など、後遺症についての損害賠償金は、後遺障害等級認定を受けなければ、まず請求できません。

後遺障害として認定される等級に応じて、後遺障害慰謝料や逸失利益の目安も決まります。
等級が本来認定されるべきものよりも低く認定されてしまうと、数十万から数百万円単位で後遺障害の損害賠償金相場が下がってしまいます。

後遺障害等級が適切に認定されなければ、示談交渉で請求できる賠償金相場も不当に低いものになってしまいます。

交通事故紛争処理センターはあくまで示談交渉の枠組みの中で交渉をサポートしますから、センターを利用して後遺障害等級認定手続の失敗を挽回することは不可能です。

では、交通事故紛争処理センターに対して、後遺障害等級認定手続それ自体につき、たとえばどんな資料を集めればいいか相談をできないか?納得のいかない認定をされたときに再審査を要求する「異議申し立て」手続の仲介をしてもらえないか?と思うかもしれません。

残念ながら、このようなことについても、交通事故紛争処理センターは関われないのです。
交通事故紛争処理センターの手続は、後遺障害等級認定手続が完全に終わってからでないと利用できません。

(2) 後遺障害等級認定に関わらない理由

交通事故紛争処理センターが後遺障害等級認定の手続にも結果にも関わることができない理由は、主に二つあげられます。

一つ目は、損害賠償金を確定できる状況になっていなければ、手続が利用できないためです。

交通事故紛争処理センターは、センターを利用することで紛争に決着がつかないのであれば利用できません。センター利用後にまた争いが蒸し返されてしまったら非効率だからです。

たとえば、治療中は、後遺症が残らないであろうケースでも、治療費などの金額が確定できないためセンターの手続を利用することはできません。

後遺症が残った場合、後遺症について賠償請求ができるか・その金額はいくら程度になるかは、後遺障害等級認定の結果が確定しないとわかりません。
ですから、後遺障害等級認定が終わらなければ、センターの利用ができないのです。

でも、後遺障害等級認定手続自体についてサポートしてくれてもいいんじゃないか?と疑問に思った方もいることでしょう。
ところが、さらに後遺障害等級認定手続の特殊性が立ちはだかります。

二つ目の理由が、後遺障害等級認定手続は損害保険料率算出機構(以下、「算出機構」と呼びます)が独占していることです。

算出機構は後遺障害等級認定の唯一の審査機関です。こうすることで、認定手続が公平かつ迅速に行われるようになっています。
そのため、認定結果は示談では動かせません。後遺障害の認定・等級に関する判断を変えることができるのは、法律問題を最終的に決めることができる裁判所だけです。

交通事故紛争処理センターは「裁判外紛争処理機関」です。センターの最終的な手続である審査会の審査は、一見、裁判所の判決のようにも見えますが、あくまで示談交渉を手助けしているだけです。

算出機構の手続や判断に口出しをすることは、交通事故紛争処理センターでも不可能なのです。

2.後遺障害等級認定申請の前に弁護士に相談すべき理由

このように、後遺障害等級認定について交通事故紛争処理センターは全くサポートしてくれません。

後遺障害等級認定後の示談交渉がどうにもこじれそうな場合、まずは適切な後遺障害等級認定を受けられるよう、交通事故案件の経験豊富な弁護士に相談・依頼することが大切です。

(1) 後遺障害等級認定の申請を被害者請求で行える

後遺障害等級認定手続の申請方法には、以下の二つがあります。

  • 被害者請求:被害者様自身で資料を収集し申請するもの
  • 事前認定:ほとんどの資料収集と申請手続きを加害者側の任意保険会社が代行するもの

特定の等級に認定されることがだれの目から見ても明らかな手足の欠損などのケースを除き、弁護士のサポートを受けて被害者請求をすることがとても大切になります。

事前認定では、後述する後遺障害診断書以外の資料全ての収集や申請書類の作成、申請手続きそのものを被害者様がする必要がなくとても楽な方法ですが、認定される等級が低くなるおそれがあります。

後遺障害等級認定では、後遺症の有無や程度、交通事故との因果関係が厳しくチェックされます。しかも、書面審査ですから算出機構に出向いて診察を受けて症状を訴えることも検査をすることもできません。

にもかかわらず、肝心の書類を、保険金を支払うことになる保険会社が集める事前認定では、ベストの認定結果にたどり着けるような満足のいく資料収集は期待できません。しかも、どんな資料を提出したのかも被害者様は把握できません。

ですから、後遺障害等級認定では、被害者請求が基本になると考えてください。

被害者様自ら、必要書類や検査結果などの医療記録を積極的に集めて、その内容を確認しつつ、認定の目途を立てて申請したほうが、認定される確率、適切な等級に認定される確率は高くなりやすいのです。

もっとも、被害者請求のメリットを最大限に活かすには、弁護士によるサポートが不可欠です。

後遺障害等級認定でどのような内容のどんな資料が必要か、被害者様では把握しきれないでしょう。

ネットや本で手に入れられる知識はあくまで一般論です。被害者様の具体的な事情ではどうなるのかは、被害者様の相談を受けた弁護士にしか分かりません。

後遺障害の認定の申請方法 (事前認定と被害者請求)

[参考記事]

後遺障害の認定の申請方法(事前認定と被害者請求)

(2) 「後遺障害診断書」のアドバイスが可能

後遺障害診断書は、後遺障害等級認定手続のための特別な診断書です。

治療が終了した「症状固定」の時点における症状、つまり後遺症の認定条件などに直接かかわる重要なポイントについて、医師が専門的な判断を記載します。

後遺症の内容や症状の重さ、原因については、なんといっても医師の判断が大きな影響を及ぼします。
医師の判断が記載された資料の中でも、後遺障害等級認定手続上、間違いなく最も重視されやすいものが、後遺障害診断書なのです。

この後遺障害診断書に問題があると、当然、後遺障害等級認定には大きな悪影響が及びます。

医師は医学の専門家ですが必ずしも後遺障害等級認定手続を熟知しているとは限りません。
そこで、あらかじめ弁護士に相談して、後遺障害診断書の中でも被害者様のケースではどの項目のどのようなことに注意すればいいのかのアドバイスを事前に受けておきましょう。

そうすれば、医師に後遺障害診断書を依頼するときに自覚症状をどのように伝えるべきか、医師から後遺障害診断書を受け取るときに、どのような点を確認すべきかなどがわかります。

後遺障害診断書の内容を確認し、もし気になる点があれば、その場で医師に修正をお願いすることができます。
医学的な判断には口をはさむことはできませんが、上記のような「書き方の問題」「ちょっとしたミス」なら直してもらえるでしょう。

3.認定後の示談交渉で弁護士を使ってセンターを利用も可能

交通事故紛争処理センターの公式ホームページには、「申立人本人が費用をかけ別に弁護士を依頼する心配はありません。」と記載されています。

しかし、ホームページにも記載がある通り、相談担当弁護士は「中立公正」。弁護士によるあっせんがうまくいかなかったときに審査手続を行う審査会もそうですが、被害者様の味方というわけではなく、あくまで「第三者」です。

被害者様の立場を尊重しつつ、既存の制度や相場、裁判所の判断を踏まえて保険会社と交渉をするのは、被害者様が個人的に依頼した弁護士だけです。

弁護士をつけて交通事故紛争処理センターを利用すれば、

  • 多くの争点や複雑な事実関係を整理して裁判より早くに解決できる
  • 裁判所で認められないリスクがある損害の賠償請求を相談担当弁護士や審査会に認めてもらえるようにする
  • 相場からかけ離れた低額の支払いしか提示しない相手との間に第三者を介入させて話をつける

など、交通事故紛争処理センターのメリットを最大限引き出せる可能性があります。

4.まとめ

残念ながら、交通事故紛争処理センターは後遺障害等級認定では役に立ちません。認定がうまくいかなければ、後遺障害慰謝料などの金額の相場自体が下がってしまいます。

交通事故紛争処理センターは中立的な立場ですから、後遺障害の損害賠償請求に関わる多くの専門的で複雑な問題について、本気で減額を迫ってくる保険会社に被害者様が十分対抗できるようなフォローをしてくれるわけではありません。

まずは弁護士に相談しましょう。

泉総合法律事務所は、交通事故の初回相談が無料となっております。
これまで多数の後遺症に苦しむ被害者様の示談交渉をお手伝いしてまいりました。

皆様のご来訪を、心よりお待ちしております

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