債務整理

ハードシップ免責とは|個人再生の再生計画に行き詰まった場合

ハードシップ免責|個人再生の再生計画に行き詰まった場合の救済制度

個人再生手続により債務整理をすれば、元本も含めて大幅に返済負担を減額することができます。

しかし、返済に行き詰まれば借金は復活してしまいます。個人再生で債務者を借金から救済する最終手段となるのがハードシップ免責制度です。

このコラムでは、個人再生手続による債務整理にあと一歩のところで失敗してしまいそうな場合に活用できる最後の借金救済制度、個人再生のハードシップ免責について説明します。

1.個人再生による債務整理の問題点

個人再生手続にも様々なデメリットはあります。最大のデメリットは、返済負担が一部とはいえ残ることです。

しかも、再生計画に従った返済ができなくなると、残る借金全額が復活してしまいます。
手続にかかった費用や負担はもちろん、再生計画に基づくそれまでの返済も水の泡です(もちろん返済した額は、復活した借金から差し引かれることにはなります)。

再生計画を事後的に最大2年延長できる「再生計画の変更」という制度もありますが、返済総額は減りません。

あともう少しで個人再生手続が成功するのに、という債務者への「蜘蛛の糸」のような制度が、ハードシップ免責制度です。

2.ハードシップ免責制度の概要と利用条件

(1) ハードシップ免責制度の概要

ハードシップ免責の「ハードシップ」とは、英語で「難儀、辛苦、困苦、欠乏」という意味を持ちます(weblioより)。

ハードシップ免責を利用できた場合、再生計画上の残る返済額はもちろん、その他の借金も全て免除されます。
つまり、個人再生手続の中で、限定的に自己破産手続をすることを認めるような制度です。

しかし、あくまで個人再生手続を前提とした制度ですから、裁判所が債務者の財産を処分して債権者に配当することはありません。

そのため、救済すべき債務者を限定し、債権者を保護することを目的に、非常に厳しい条件が要求されています。

(2) ハードシップ免責制度を利用するための条件

ハードシップ免責制度が裁判所に認められるには、以下4つの条件すべてを満たさなければなりません。

①再生計画で返済することとなっていた金額のうち4分の3以上をすでに支払い終わっていること

そもそも、個人再生手続きは、回収できる借金が減少してしまうため、債権者が損失を受ける手続きです。
そのうえハードシップ免責が認められると、再生計画に基づく返済を期待した債権者がそれ以上に損害を受けかねません。

まして、個人再生手続は、国家権力を背景に裁判所が債権者に損害を与えてでも強制的に借金を減額する制度です。

ですから、債権者に本来の個人再生計画完遂による残金免除以上の損害を与えてしまうハードシップ免責を認めるには、まず、再生計画上の返済がこれまで十分されていることが必要となります。

②債務者の責めに帰すことができないやむを得ない事情によって、返済が極めて困難になっていること

この条件は、債務者が返済できなくなった原因から、救済すべき債務者を見定めるものです。

債務者にはどうしようもない原因により、収入が全くなくなってしまった場合や、莫大な支出が生じてしまった場合が該当します。

たとえば、以下のようなものが典型例です。

  • 勤務先の倒産やリストラで仕事を失い、不況により再就職先がない場合
  • 個人事業主が、災害などで事業用設備を失った場合
  • 病気や怪我などで働けなくなった、または、手術や入院により莫大な医療費がかかった場合

③再生計画の変更制度による返済期間の延長をしても返済ができないと認められること

個人再生手続きは、再生計画に基づく返済が困難となった債務者を救済する制度として、再生計画で定められた3~5年の支払期間を、さらに2年まで追加で延長できる再生計画の変更制度も用意しています。

支払期間を延長すれば、1回あたりの返済額を減らすことが出来ますから、返済できる可能性が高くなります。

しかし、返済総額については一切減額されません。つまり、債権者を直接害することのない制度です。

この制度を使用しても返済が困難と判断された場合にのみ、ハードシップ免責が認められます。

④債権者の一般的な利益に反しないこと

この条件は、再生計画認可の時点で、仮に債務者が自己破産手続をしていたら、債権者に配当されていたであろう債務者の財産相当額(清算価値)よりも多い金額を、再生計画に基づいてすでに支払っているかということを意味します。

個人再生の一般的な手続では、再生計画上の返済総額が、法律で借金総額に応じて定められている最低弁済額か、清算価値のいずれか大きい方となります。

つまり、個人再生手続では、必ず自己破産手続での配当額以上の金額を債権者に返済しなければならないことになっているわけです。
これを清算価値保証の原則と言います。

この清算価値以上を支払い終えていなければ、ハードシップ免責は認められません。

清算価値保証の原則が、ハードシップ免責制度に反映されたものがこの条件です。

3.ハードシップ免責制度のデメリット

ハードシップ免責を認めてもらったとしても、相応のデメリットはあります。

(1)マイホームを失う恐れがある

ハードシップ免責をすると、住宅資金特別条項により、再生計画に組み込まれずに従来通り返済していた住宅ローンも対象となってしまいます。

住宅資金特別条項によりマイホームが維持できる理由は、住宅ローンを住宅ローン債権者に一切減額せずに支払い続けているからです。

住宅ローンがハードシップ免責の対象となれば、債権者は抵当権に基づいてマイホームを処分してしまうことになります。

(2) 自己破産手続が一定期間原則許されなくなる

ハードシップ免責を受けた後7年間は、自己破産手続が原則許されなくなります。
ハードシップ免責をしたことは免責不許可事由となっているからです。

自己破産を申し立てた場合、実務上、裁判所の判断で借金が免除されることはありますが、それでも、負担の重い管財事件手続きを用いざるを得なくなります。

(3) 給与所得者等再生手続をすることが一定期間出来なくなる

個人再生手続には、債権者の多数決により手続が打ち切られる恐れがある小規模個人再生と、債権者の意思に左右されない給与所得者等再生の2種類の手続があります。

ハードシップ免責後7年間は、上記の手続のうち給与所得者等再生については、利用できなくなります。

4.個人再生のご相談は泉総合法律事務所へ

個人再生手続は、自己破産手続のデメリットやリスクを回避して債務整理をすることが出来ますが、減額されるとはいえ返済負担が残ります。
個人再生計画が認可されても、計画に基づく返済を終えなければ、完全に借金からは解放されないのです。

ハードシップ免責制度は、個人再生手続であるにもかかわらず、自己破産手続のように支払負担を免除するという、再生計画の履行に挫折しかけている債務者への究極の借金救済制度です。そのため、ハードシップ免責を裁判所が認めるケースは、非常に限られています。

よって、ハードシップ免責を考えなければならない状況にならないように、再生計画案作成の段階から、無理のない返済計画を立てることが大切です。

泉総合法律事務所にご相談いただけましたら、具体的事情に応じた最適な再生計画案をご提案します。先を見据えた個人再生計画をお手伝いしますので、借金問題でお悩みの方は、ぜひ泉総合法律事務所へご連絡ください。

なお、当事務所ではハードシップ免責の受付は行っておりませんので、ご承知おきください。

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