万引きで逮捕された後はどうなるのか?
万引きは軽い犯罪と考えている方も多いかもしれませんが、実際は懲役刑の可能性もある重い刑罰となってしまうこともあります。
万引きをした人すべてが逮捕され、有罪判決がなされるわけではありませんが、事件後に適切な対処をしないと前科がつくなどの影響が出てしまうのです。
そこで今回は、万引きで逮捕・勾留されるケースから実刑の可能性、万引きの刑罰、逮捕後の流れ、弁護士に相談すべき理由までわかりやすく解説します。
このコラムの目次
1.そもそも万引きは何の罪?
まず、万引きの刑罰についてご説明します。
(1) 万引きは窃盗罪(刑法235条)にあたる
皆さんは、そもそも万引きが何の罪に当たるかご存じでしょうか?
万引きは、刑法上「窃盗罪」にあたります。窃盗罪では「10年以下の懲役または50万円以下の罰金(刑法235条)」が定められており、非常に重い罪となっています。
たかが万引きで懲役なんて…と考えるかもしれませんが、車を盗むのも、現金を盗むのも刑法上は原則として窃盗罪となります。
犯罪の内容により罪の重さは変わりますが、万引きでも懲役刑の可能性があるのです。
もっとも、すべての事件が懲役刑、罰金刑となり有罪となるわけではありません。
万引きで初犯の場合の多くは、微罪処分として片付けられる、逮捕された場合でも不起訴となるケースが多いといえます。
(2) 万引きで逮捕後の流れ
《万引きで逮捕後の流れ》
逮捕→検察送致→勾留請求の可否→勾留決定→起訴・不起訴決定
万引きで逮捕された場合、その後は警察署で取り調べを受け48時間以内に釈放されるか、検察に身柄を送致されることになります。
検察でも同様に取り調べを受け、検察送致後から24時間以内に勾留請求を行うかどうかが決定されます。
勾留請求がなければ釈放ですが、請求が決まれば裁判官により勾留決定が下される可能性があります。
裁判官が勾留決定すると、原則として10日間家に帰ることはできません。万引きの場合、延長が行われるのは稀ですが延長が決まるとさらに10日身柄拘束が続きます。
勾留中には、起訴・不起訴が決定され、起訴が決まれば約1ヶ月程度で裁判、不起訴となれば釈放です。
未成年の場合は、14歳以上であれば逮捕された後、家庭裁判所に送致されその後の処遇が決定します。14歳未満の場合は、逮捕ではなく補導となり、児童相談所へ送致となるでしょう。
未成年でも14歳以上で、悪質と判断された場合には稀に成人と同じ裁判で裁かれることになります。
このように、万引きは窃盗罪で罰則を受ける可能性があります。通常は、逮捕されても即日釈放となることが多いですが、悪質な事件となると身体拘束(逮捕、勾留)が続く可能性も否定できません。
2.万引きで逮捕・勾留されるケース
万引きで逮捕されることはないと考えているかもしれませんが、逮捕もあり得ます。
どのようなケースで逮捕または勾留されることがあるのかを見ていきましょう。
(1) 万引きで逮捕されるケース
万引きで逮捕のほとんどは現行犯逮捕です。スーパーなどで物を盗んだ直後に店の店員か万引きGメンなどに気づかれ逮捕されてしまうのが典型例といえるでしょう。
現行犯逮捕は警察官だけでなく、一般人でも可能なため、一般人に取り押さえられても現行犯逮捕が成立します。
被害金額が小さい場合などは、店の人に厳重注意され帰されることもありますが、場合によっては警察に報告され、そのまま警察で取り調べを受けることもあるでしょう。
これ以外でも、後日逮捕といって、商品の在庫管理時に数が合わないという理由から防犯カメラの映像を調べたら、犯行が発覚し、逮捕されるというケースもありえます。
逮捕されるのは高価な物を盗む、何度も繰り返し行っている場合と考える方がいますが、これは間違いです。場合によっては初犯でも、数百円の被害金額でも逮捕される可能性はあります。
勾留(逮捕後に行われる長期の身体拘束)の頻度に関しては、万引きの場合は少ない傾向にあるといえるでしょう。逮捕当日に釈放されるのが一般的で、勾留が行われるのは、逃走の可能性や罪証隠滅の可能性が考えられる場合です。
具体的には、被害金額が大きい場合や、複数犯による計画的犯行の場合、常習性がある場合が挙げられます。
万引きに関しては全体の6割が検挙されているのが実態です。まだ見つかっていなくとも、いつか見つかってしまう可能性はあります。
できるだけ早めに弁護士に相談するか、警察に出頭するのが賢明な判断です。
(2) 実刑の可能性はあるのか
「万引きで懲役刑はないはず…」と軽く考えている方が多いのではないでしょうか?
しかし、これはかなり甘い考えといえます。万引きの場合でも実刑の可能性は否定できないからです。
万引きは即日釈放というケースも多いため、これまで万引きで捕まったことがあっても、重く受け止めないことがあるのでしょう。
万引きの量刑では、被害金額の大きさ、犯行態様、常習性、前科、示談の成否などを考慮します。被害金額が大きければ悪い情状の方に傾き、小さければ実刑の可能性は低くなります。
もっとも、被害金額が少なくとも、複数人で計画的に犯罪を実行していた場合には、悪質な犯行と捉えられ実刑の可能性も高くなります。
これまでに万引きで捕まった前歴がある場合でも、悪い情状として傾くでしょう。
このように、起訴されてしまった場合は、さまざまな事情が考慮され執行猶予がつかず実刑となる可能性も否定できません。
特に、再犯や常習性がある場合は、実刑の可能性もあると考えるべきです。
3.万引き事件を弁護士に相談すべき理由
最後に、万引き事件を弁護士に相談すべき理由についてご説明します。
(1) 逮捕・勾留を防ぎ、不起訴・執行猶予の可能性が高まる
万引き事件は、示談で被害弁償をすることが事件解決の近道となります。
もっとも、被害者と直接示談交渉を行うと、なかなか交渉が前に進まず、示談が成立しないということもよくあります。
刑事事件を多く取り扱う弁護士であれば、示談交渉も円滑に進め、早期示談成立の可能性も高まるでしょう。逮捕前であれば、逮捕や勾留を防ぐために弁護活動を行うことも可能です。
また、万引き事件の場合、示談を成立させることが不起訴に非常に有効です。
仮に勾留されてしまったとしても、勾留中に示談成立があれば、釈放されることもあります。
(2) 示談を拒絶された場合の対策
万引きの場合、企業の運営方針などから「一切の示談を断る」というケースもあります。
この場合、示談が難しくなり、交渉を行っても最終的に拒絶されてしまう場合も少なくありません。
もっとも、示談ができなくとも、贖罪寄付(被害金額を慈善団体に寄付する行為)や供託などを行うことによって、反省の意思を示すことができます。
これらの行為は示談成立と同様に、良い情状として考慮してもらうことができるため、不起訴の可能性や執行猶予の可能性を高めることができます。
このように、弁護士の協力を得ることで、多くのメリットを受けることができます。逮捕されたらできるだけ早く専門家である弁護士に相談してください。刑事事件はスピードが勝負となります。
(3) 万引きには心の病が潜んでいる可能性がある
皆さんは「クレプトマニア」という心の病気をご存じでしょうか?
万引きと非常に関係の深い病気であり、何度も窃盗行為を繰り返してしまうものです。
万引きをしたすべての方が、クレプトマニアというわけではありませんが、何度も常習的に犯行を繰り返している場合は、要注意です。
「万引きを行うことがやめられない」場合は、この病気である可能性が高いため、できるだけ早い段階で治療を受ける必要があります。この場合、治療はもちろんですが、しっかりと罪を認めて、償う必要があります。
犯罪に心の病が潜んでいる場合は、警察に罪を告白して罪を償っていくことが、改善のきっかけとなります。見つからないからといって放置しておくと症状は悪化して、どんどんやめられなくなってしまうため、法律の専門家である弁護士と、心療内科の医師の協力を得て改善を図るのが適切です。
クレプトマニアという疾患であることは弁護士から説明できます。警察、検察に説明し、治療して改善する意思があること、周囲のサポートを得ることができることを示すことで不起訴や執行猶予判決の可能性を高めることも可能です。
心当たりがある方は、弁護士に相談と医療機関への受診をおすすめいたします。
4.万引きで逮捕されたら、弁護士に相談を
万引きはれっきとした犯罪です。 罰金や実刑になることはありえないと軽く考えていると、大変なことになってしまいます。
できるだけ早く示談を成立させ、将来の人生に影響を残さないように努めるのが賢明です。
泉総合法律事務所は、万引き事案などの刑事事件も数多く取り扱い、実績も豊富です。法律の専門家である弁護士が、スピーディーに事案解決に導きます。
万引き事件を起こしてしまったら、ぜひ当法律事務所にご相談ください。
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