通院頻度、通院期間が重要ポイント|交通事故でもらえる慰謝料解説
交通事故に遭ってけがを負い、医療機関に通院した場合、加害者に対して「通院慰謝料」というものを請求することができます。
これは、事故によってけがを負い、通院を余儀なくされたことについての慰謝料です。
通院慰謝料は、通院期間を基礎として算定されるのが原則ですが、同じ期間通院したとしても、通院慰謝料が多くなるケースと少なくなるケースがあります。
どうしてそのような差が生じるのでしょうか?
この記事では、通院慰謝料を含め、交通事故による慰謝料が増額するポイントについて解説します。
このコラムの目次
1.通院頻度の重要性
けがが重篤な場合、医師から次の通院について明確な指示があり、被害者の方も、医師の指示に従って通院しなければ、いつまでも治らずに苦しむことになりますから、通院頻度について特に意識する必要はありません。
他方で、交通事故で負うけがとして最も多いと言われている「むち打ち」の場合、通院頻度に気を付けなければなりません。
なぜかというと、むち打ちの場合、医師によっては次の通院について明確な指示がないことも多く、被害者の方も、痛みなどの症状はあるものの、我慢すれば日常生活を営めないこともないため、仕事、家事・育児が忙しいと通院を怠りがちだからです。
そうして、初回の通院から次の通院まで日にちが空いてしまうと、加害者側から、「治ったから通院していない」と主張されてしまうことがあります。
また、そうでなくても、通院慰謝料は、通院期間を基礎として算定されるのが原則ですが、「通院が長期にわたる場合は、症状、治療内容、通院頻度をふまえ実通院日数の3倍程度を慰謝料算定のための通院期間の目安とすることもある」(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準 上巻(基準編) 2016』170頁)とされています。
そのため加害者側は、このような考えを盾にとり、通院期間が6か月だとしても、その間、わずか6回程度しか通院していなかったとすると、「通院頻度も少なく、症状も軽いから実通院日数3日の3倍、18日を通院期間と考えるべき」と主張してくることがあります。
つまり、実際の通院期間は6か月であるものの、慰謝料の算定に当たっては、1か月にも満たない18日を前提とされてしまうのです。
このような事態を避けるためにも、痛みがあるようであれば、仕事、家事・育児の合間をぬって、きちんと通院をするよう心がけてください。
なお、通院のため仕事を休まざるを得なかった場合や有給休暇を使った場合、休業損害として加害者側に請求できます。専業主婦の方も、通院のため不十分な家事労働を余儀なくされたことについて、休業損害として加害者側に請求することができます。
2.保険会社からの治療費打ち切り通告への対応
先ほどご説明したとおり、通院慰謝料は通院期間を基礎として算定されるのが原則なので、通院期間が長くなれば長くなるほど増えるのが一般的です。
したがって、被害者の方には、治療によって痛みがなくなるか、痛みは残っているものの医師から「これ以上は良くならない」と告げられるまで通院を続けてください(症状固定)。
しかしながら、これを阻むのが、加害者が加入する任意保険の保険会社による治療費の支払いの打ち切りです。
加害者が任意保険に加入している場合、任意保険の保険会社の担当者が窓口となって、被害者とやりとりをするのが一般的です。
保険会社としては、できる限り治療費を抑えて保険金の支出も抑えたいという意向があります。また、通院慰謝料は通院期間に応じて算出されるので、これを抑えるためにも「今月一杯で治療費の支払いを打ち切ります」といった連絡をしてきます。これも事故によって負ったけががむち打ちの場合によくみられることです。
保険会社からこのような連絡を受けると、「もう通院してはいけないんだ!」と誤解してしまい、痛みが残っているにもかかわらず、通院をやめてしまう被害者の方が多くみられます。
しかしながら、治療を止める必要はありません。
まずは、医師に相談し、医師が「もう少し治療を続ければ良くなる」と言ってくれるのであれば、その旨を任意保険の保険会社に伝え、治療を継続したいという意思を示してください。
それでも治療費の支払いを打ち切るということであれば、自分の健康保険で通院を続けてください。医療機関の窓口で「今後は健康保険を使います」と伝えるだけで大丈夫です。
交通事故との因果関係が認められる限り、支払いが打ち切られた後の治療費も加害者に請求することができますし、自分の健康保険で通院した期間についても,通院慰謝料を算定するために基礎となる期間に算入されます。
3.後遺障害の認定を受ける
医療機関への通院を続けたものの、事故に遭う前の状態に戻らず痛みが残ってしまった場合、通院慰謝料に加え、後遺障害慰謝料の支払いを受けられる余地があります。
後遺障害慰謝料は「後遺障害が残った」と主張するだけではだめで、後遺障害の認定を受けることができなければ支払われません。
後遺障害の認定を受けるには、必要書類を揃えた上で、「自賠責損害調査事務所」というところに申請しなければならないのですが、手続きは大変なものなので、通院している最中に弁護士への依頼を検討しておいた方がよいでしょう。
4.保険会社からの提示内容に気を付ける
ここまで、慰謝料額が増額するポイントについてご説明してきましたが、最大の増額ポイントは、示談交渉時にあります。
交通事故の際、加害者側から被害者に対して支払われる慰謝料は、通院慰謝料と後遺障害慰謝料の2つです。以下では、それぞれの増額ポイントについてご説明します。
(1) 通院慰謝料について
通院慰謝料は、医療機関に通院した期間に応じて、
①自賠責保険基準
②任意保険会社基準
③裁判所基準
以上のいずれかによって算定されます。
それぞれの基準によって計算した場合の慰謝料はどうなるのか、以下では、通院期間が6か月の場合で解説します。
①自賠責保険基準
自賠責保険基準は、実通院日数を2倍した日数か通院期間のどちらか少ない方に「4200円」をかけるものです。
したがって、6か月通院し、実通院日数が60日の場合、通院期間(180日)より、実通院日数を2倍した日数(120日)の方が少ないので、以下の計算式となります。
(計算式)120日×4200円=50万4000円
②任意保険会社基準
任意保険会社基準は、任意保険会社独自のものであるため、計算式については不明とされています。
一般的に、①自賠責保険基準で算出した金額よりは多く、③裁判基準で算出した金額よりは少ないとされています。
③裁判基準
裁判基準では、通院期間が3か月の場合53万円、6か月の場合89万円とされています。
通常、任意保険会社は、弁護士に依頼していない被害者に対し、①又は②の基準で算出した金額を提示してきます。
しかし、被害者が弁護士に依頼すれば、弁護士は当然、③で算出した金額を請求します。保険会社もこれに同意することが通常でしょう。
また、治療費の売り切り後に健康保険で通院していた部分についても、治療費や通院慰謝料を請求するのであれば、弁護士に委任しての交渉が不可欠となります。
(2) 後遺障害慰謝料
後遺障害には、重さに応じて1級から14級が定められていますが、むち打ちは一番軽度とされる14級と認定されることが多くなっています。
14級の後遺障害が認定された場合、後遺障害慰謝料についても自賠責基準と裁判所基準があり、前者は32万円であるのに対し、後者は110万円とされています。
よって、ここでも弁護士に依頼して裁判所基準に基づいて請求してもらうことが必要不可欠なのです。
5.納得いく慰謝料獲得のためには弁護士にご相談を
以上、交通事故で受け取ることができる慰謝料と、通院期間の重要性について解説しました。
多くの方にとって、交通事故のけがで通院するということは初めての経験でしょう。どのようにすれば納得できる損害賠償・慰謝料を受け取ることができるのか分からないまま、保険会社の言いなりになってしまうことも多いと思います。
交通事故の被害者となってしまい、示談交渉や慰謝料額でお悩みの方は、泉総合法律事務所の交通事故に詳しい弁護士に是非一度ご相談ください。被害者の方に寄り添い、事故解決まで親身になってサポート致します。
初回のご相談は1時間無料となっておりますので、どうぞ安心してご連絡頂ければと思います。
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